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春   雷

さざ波
2003.5.7

椿夏つばき梢に冬芽かがよへり生(しょう)あるものは常にいそしむ 
打たるるは太鼓か我かばち音におのれの中の何かめざめる
生きること優しと淋しと思ふ日も身は薔薇色のセーターを着る
しずかなる墨線による抽象画直(ひた)にむかへばこころあふれき
離れ住む卆寿の母を思ひゐて春雷遠き夜を起きゐつ
春欄の花ほころびし霧の朝梵鐘の音低くくぐもる
梅子供らの声にぎやかに過ぎゆきて沈丁花の香多(さわ)に漂ふ  
ねもごろに小鳥の餌をまく老い母のつつがなき日々の便り届きぬ
君が賜し手びねりの雛紅ふふみ時間(とき)戻しつつ吾をとりこむ
土器(かわらけ)にあかき椿を挿しおれば裡なるものの象なしゆく
ひとり居のわれに届きし独活水菜こころなごみて初ものを食ぶ
かつて読みし鴎外訳の「冬の王」その弧(ひとり)の歩み思ふ春の夜
わが思ひ行き着く方のありあらぬ身に今生の桜吹雪けり
さわやかに欅若葉を抜くる風このたまゆらの命ゆすりぬ    
ひとすじの飛行機雲に一刻(ひととき)を心放つる五月吉日  
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